「待つことの意味」

2人は、パーティーでカップリングになり、


交際がトントン拍子に進み、めでたく成婚退会しました。


あの頃の2人は、傍目から見ても本当に幸せそうでした。



そんなときに、彼の方に大きな変化が訪れました。


それは、彼が部署の重要なプロジェクトの責任者に


決まったことでした。




若手の彼は、社内でも異例の抜擢だったとか。


その間、何回か海外出張もこなさなくてはならない、


今までに経験したことのないハードな仕事だったそうです。



それからです。 2人の歯車が噛み合わなくなったのは。



彼がいままで彼女のためにしてくれたことは、


一切してくれなくなりました。



たとえば、



・毎日電話をしてくれたこと


・週末は必ずデートをしたこと


・会社帰りに待ち合わせをしてゴハンを食べたこと


などです。



多分、彼は精神的、時間的に余裕を失っていたのでしょう。



彼女にとって何よりも辛かったのは、連絡が少なくなり、


週末もほとんど会えなくなったことでした。



夢のような彼との時間から、一転して失恋したような気持ちを


味わったのです。



そしてやっと会えた日、会えない寂しさからくるストレスを


彼に思い切りぶつけてしまった彼女。



そのときの彼の反応は、


「君は僕のことを何もわかってくれようとしないんだね」


とだけ言って、沈黙・・・。



それからたまにあった電話がかかってこなくなったそうです。



その後彼女の賢明だったことは、彼に自分の辛い感情を


ぶつけることなく待ったということでした。



そのときの気持ちを彼女はこう話しています。



自分の尋常ではない感情が怖かったし、


会えば彼に何を言ってしまうかわからない。


そうすれば、彼は私から完全に去っていくだろう。


まず、自分が冷静になる期間が必要だと思ったそうです。



彼女の彼にしたことは、たまに体を気遣う短い手紙を送ったこと。


それ以外は、沈黙したそうです。



彼から連絡がきたのは、それから6ヶ月後のことでした。



そのときの彼の話は、突然大きな仕事を抱えてしまって、


他のことが頭に入らなくなった。 もし、もう一度


やり直させてもらえるのならやり直したいという内容でした。



突然の状況や精神状態から脱したときに、再び思い出したのは


彼の立場を認め、そっと見守っていてくれた彼女の


ことだったのでしょう。



彼女が感情的になって自分の辛さをぶつけ続けたら、


彼の気持ちが彼女から遠ざかっていって、


破談になっていたかもしれません。




こうした予期せぬ困難を乗り越えた二人は、


現在は海外で暮らしています。


毎年いただくクリスマスカードが楽しみです。



賢明な彼女のことですから、いまではもっと


ご夫婦の絆は深くなっていることでしょう。

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